子どものいろいろな不適応問題の背景には、多かれ少なかれ心の発達問題が絡んでします。心の発達問題とは、自分が生活している現実、環境、社会、人間関係の中で「適応する人間になる」思いを創り出すことが、うまく発達できず未獲得であるというものです。心で「適応する人間になる」思いを創ることを「適応機制」(防衛機制の概念とは異なるものです)といいますが、適応機制が適切に働かないので、結果として、不適応になります。だから、「適応機制」を獲得して発達すれば、適応した生活ができるようになります。
一般には、「適応」のネガ裏返しが「不適応」で、「不適応」を治せば、「適応」になると考えられています。だから、子どもの、不適応行動を正そうとする声かけは、「~するな」「~やめなさい」「~は、ダメです」と不適応行動の否定ばかりの言葉になちがちです。
精神科領域の相談の項でも触れた、「不健康な思いと健康な思いの関係」の有り方と同じで、人間の心には、「不適応(一次意識)」の思いと、「適応(二次意識)」の思いがあります。「不適応」の思いは、誰にでも有るもので、消せない、無くせない、取り替えられないものです。だから、こういった不適応行動を否定する対話では、適応行動をする思いには繋がりません。
適応行動をさせようとして「~しなさい」「~やりなさい」「どうして、~しないの」と、できない行動を促す対応もしがちです。こういった対応で、子どもが、応じればれば、それでいいですが、多くの場合「嫌だ」「したくない」「する気がない」と思っている行動は、いくら「~しなさい」と、例え優しく促されたとしても、しないのが自然な反応で、こういった対応で「適応機制」育つようにはなりにくいものです。
良い所をみつけて、褒め、良い所を延ばす指導がありますが、これは、よい所をより延ばす方法で、できないことが、できるようになる方法ではありません。だから、「適応機制」が未発達で、いろいろな、現実行動、適応行動、人間行動ができない子どもの指導には、向かない方法です。「適応機制」に未獲得な子どもの指導は、「適応機制」が獲得できる方法でなければ、効果がありません。
子どもの、不適応行動を正そうとするのなら、「適応」の思いを、より大きく強く柔軟に育つように関わることが必要です。今は、不適応行動していても、これから、適応行動するようになればいい訳で、その対話は、「~になる」「~できるようになる」「~になれる」といった言葉ですることです。こういった言葉を聞いた子どもが、子どもの心で、「(自分が)~なるんだ」「(自分が)~できるようになるよ」「(自分が)~になれるさ」など「自分が~になる」と、考え思うことをするようになると、外からの是正や修正などは必要なく、自発的自主的に自然な適応行動をするようになります。