思ってみることをして自力で創る思い

思ってみることをして自力で創る思い

 「思ってみることをする」とは文法的に変な日本語ですが、心を働かせて思うことを主体的にするという意味で、思ってみることをすると言っています。人間は自分の思いを自分で創っているのですが、殆どの人が、当たり前のようにしているので、敢えて自分が思いを創っていることを意識することがありません。しかし、創っています。一次意識の思いを思いつつ、思ってみることをして自力で創る思いを、一次的に思ってしまう思いに対して、二次的に創る思いという意味で「二次意識の思い」と呼んでいます。

 「心頭滅却すれば火もまた涼し」は、織田軍団に甲斐武田が攻め滅ぼされる際に、落ち武者の引き渡しを拒否して焼き殺された恵林寺の快川禅師の偈(げ=悟り)です。火に焼かれば熱いと思ってしまうのが一次意識の思いです。なのに、何も感じないように二次意識の思いを思ってみることをして創ると、創った思いのように火も涼しいと感じるというものです。熱いと感じる一次意識の思いとは真反対に、何も感じないという思いは、自力で創らないと思えない二次意識の思いです。常人は、焼かれながらそんな思いが創れるものではありませんが、創ろうと思えば創れるということの証になる故事です。

 先述しましたが、適応するために思いを創って適応する心の働きを適応機制といいます。一次意識がどんな思いであっても、思ってみることをして思いを創る人間の心の働きは、強力です。人間の心に思いを創る働きがあるので、未知のことを発見したり未だ無い物を発明したりすることができます。自然の変化や環境の劣化に遭遇しても、いろいろ工夫する思いを創って適応することができます。新たな思いを創ることを繰り返して人間は進化してきました。ある学者が、人間は地球に寄生するカビだと言いました。灼熱の地でも酷寒の地でも劣悪環境を生き延びて繁殖して地球を食い潰すというのです。人間の適応機制が破壊的に旺盛だということを言っているのです。さりながら、食いつぶしてしまうのがカビですが、食いつぶさないように工夫して適応することも考えるのが人間の適応機制なので、人間とカビとを同一視するのはいかがなものかと思います。それは別儀としても、人間の適応機制は優れてすばらしいもので、適応するためには自力でどのようにも思いを創ることができるということを銘記すべきです。思ってみることをして自力でどのようにも思いが創れるので、前世、来世、天国、地獄、宇宙、海底、地中など、なんでも思いが創れます。思いを馳せれば創れない思いなど何もありません。経験が無くても、未知でも、不可能でも、創ろうと思えばなんとでも創れます。しかし、創ろうと思わなければいつもでも創れません。創ると創った思いのように行動が開始されます。

 研修会の講師の時に「ビルを壊すときに使う大きな鉄球があります。それが、下から上に向かって落ちて、天井にめり込んで埃が舞っている状況を思えますか」と受講者に訊いてみました。9割の人が「思えません、無理です」と応えました。「ほー、無理ですか。実際には有り得ないことですが、単なる想像ですよ、仮想・空想じゃないですか、空像なら創れるでしょう」と言うと「なーんだ、空想でいいんですか、それならできます」と皆が言いました。「ええー!?、こんなこと仮想・想像・空想以外に思いようがあるんですか、空想なのは当然でしょう。最初からそう思えなかったんですか?いったい、どんな思いが空想を難しくしていましたか?」と訊くと「いやぁー、あり得ない、できない、無理だとか、そんな思いですかね」「でしょう、それが私の質問で、皆さんが自然に思ってしまった一次意識の思いですね。一次意識の思いが確信的で関心が外れなったので、空想で、イメージを創ってみるかと、思えなかったんでしょう」「言われると、空想が一次意識の思いに阻まれていたことが、すごくわかります」「空想、想像するんですよと聞くと、一次意識への関心の枷が簡単に外れて、空想で思いが創れるようになったでしょう。これが治療的とか教育的とかいう支援ですね」「わかります、なーんだ空想すればいいのかと思うと、関心が一次意識から外れたことが分かります」「皆さんが困ったと同じあり方になって抜け出せないのが、悩む人の心のあり方です」「でも、想像・空想でいいと言われると、すぐにできました」「聞く体験で、思いが創れるようになるのが治療的、教育的効果ですね。思いが創れたら、心がすっきりしたでしょう」「はい、なりましたね」

 思ってみることをして自力で思いを創ることなど、どのようにもできるハズなのに、相反する一次意識の思いが在ると自力で創れなくなります。でも簡単な支援があれば創れるようになる、言ってみれば適応機制が働くようになる端的な例です。

Ohkusa Psychotherapy Educational counsel Network Laboratory
大草心理臨床・教育相談室 ”お~ぷん・ラボ”

〒226-0013 横浜市緑区寺山町97田辺ビル2F1号
TEL. 045-938-6195 FAX. 045-938-6196
Email. ml@open-labo.com
[ 個人情報について ]

© 2024 Open-Labo. All Rights Reserved.