人間の心は二つの思いで働いています

人間の心は二つの思いで働いています

 本音と建て前、感情と理性、顔で笑って心で泣いてなど、心は二つの思いで働いていることを示唆する概念や諺があるにもかかわらず、一般の殆どの人は、心は一つの思いだけで働いていると思っています。心の思いが一つだと思っていると、不満、怒り、嫌悪、怖れ、懐疑、懸念といったマナス思い、ダークサイド思い、ネガティブ思い(以降不適応になりやすい思いという意味で不適応思いと表記します)を思っている状態で、プラス思い、ライトサイド思い、ポジティブ思い(以降適応になりやすい思いという意味で適応思いと表記します)を思えるようにするためには、心から不適応思いを消したり、思わないようにしたり、取り替えないとできないと思い込んでしまうことになります。普通の会話で話される、心を入れ替える、切り替える、改心するとかいう表現は、そんなことをイメージして遣われているものだと思います。しかし、私たちの今意識している思いはどんなものでも、消したり、思わないようにしたり、他の思いと取り替えたりすることができないと、心理学的にわかってます。悩んだり、心の失調に陥っている心が不健康な人は、不適応思いを解消するという不可能に取り組んで、いつまでも報われない状態に落ち込んでいる人だと言えます。心が健康な人は、ほとんど意識せずにしていることですが、そんな心の遣い方に陥ることがありません。

 誰でも、艱難苦難、困難支障に出会うと不適応思いになりますし、最初は誰だって、不適応思いを消そう、思わないようにしよう、他の思いと取り替えようと試みます。しかし、してみてもそれができないことだと分かり、分かると、不適応思いをそのままにして、適応思いを創ることへと関心を向け始めます。結果として、関心の向かう対象が不適応思いを解消することから、適応思いを創ることへ変わって、不適応思いは関心の外に置き去りにされ、不適応思いは、ただ在るだけで活動しない思いになっていきます。不適応思いが在っても、関心が、適応するための思いを創る方に向かい始め、適応思いが創れると、適応行動ができるようになります。適応思いが創れても、不適応思いが消えてしまうことはありませんが、在ってもひっそりと在るだけで、適応思いを創ることを妨害することをしなくなります。このように、在っても悪影響しないあり方を、不適応思いの化石化などと表現しています。

 心が不健康な人は、不適応思いを消したり、思わないようにしたり、他の思いに取り替えようとしたりすることを試みて、それが不可能なことだと分かるところまでは、心が健康な人と同じですが、分かっているのに、不適応思いを解消することから、関心を適応思いを創ることへ向けてみることが、どうしてもできません。解消しないと向けられないと思い込んでいるからです。結果として、いつまでも不適応思いを解消することだけに執着し拘泥している状態に、なりたくもないのに、なります。そして、いつまでも適応思いを創ることに関心を向けられなくなります。これが、悩み困り苦しむ心が不健康な人の、心の在り方です。

 心が不健康な人も、心が健康な人がしているように、以下の二つのことができるようになれば、心が健康な人になれます。

(1)心は二つの思いで働いていることを理解して、二つの思いの両方を大事にする。
(2)心の関心を、不適応思いを解消することから、適応思いを創る方に向けてみるようにする

 理解としては、難しくないどころか、むしろ簡単に思われます。当たり前のようにできている心が健康な人は、何の支障もなく無造作にできますが、一旦心が不健康に陥った人にとっては、それを実際にしてみることがとても難しいことになります。それは、心を健康にするため自分がどのように心を遣っているかなど、誰も意識してやっている人はいませんから、誰もが意識しないでしていることを、敢えて意識化してやってみようとすると、想像しなかった困難が出てくるからです。適応思いを思おうとしても、不適応思いが妨害するので、思いが創りにくくなるのです。その困難を乗り越えられるように支援してくれるのがセラピストです、セラピストに支援してもらいつつ、(1)(2)が適切にできるようなると、心が健康になります。

Ohkusa Psychotherapy Educational counsel Network Laboratory
大草心理臨床・教育相談室 ”お~ぷん・ラボ”

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